令和4年度第2次補正予算案が閣議決定。再構築補助金や生産促進事業では7,800億円を充てる。
令和4年11月8日、政府は令和4年度第2次補正予算案を閣議決定しました。一般会計の歳出総額で28兆9,222億円を計上しています。本予算案は11月中旬に臨時国会に提出し、月内の成立を目指すこととなります。
経済産業省は、中小企業・小規模事業者等関連では合計1兆1,190億円の予算案で計上、そのうち補助金拡充となる中小企業等事業再構築促進事業・中小企業生産性革命促進事業については7,800億円を充てています。
本記事では、概要が公開となった中小企業等事業再構築促進事業・中小企業生産性革命促進事業の各ポイントをご紹介します。
目次
中小企業等事業再構築促進事業
中小企業等事業再構築促進事業では、5,800億円を予算として充てています。
事業再構築補助金がこれに該当し、この度の補正予算案のポイントとして、成長分野への転換への支援や賃上げに取り組む事業者への更なるインセンティブ措置や、市場規模縮小による業種・業態からの転換や国内回帰等による転換への支援、また業況が厳しい事業者に向けて支援が取り組まれています。
成長分野への転換の支援
市場規模が10%以上拡大する業種・業態への転換を図る事業者への支援として、【成長枠】が新設されます。この分野への転換を図る場合、現在のグリーン成長枠と同様に売上減少要件が撤廃されます。
また、現在も公募が行われている類型の【グリーン成長枠】について、研究開発等の要件を2年から1年に短縮等した 「エントリークラス」を新設し、通常の「スタンダードクラス」と区別化することで事業者が応募しやすくなるよう対応が取られます。
また、この分野での賃上げにおける支援として、補助事業期間内に事業場内最低賃金を年45円以上引き上げた場合等で補助率を引上げ、また事業終了後3~5年で同水準に達成すれば上限3,000万増が措置され、事業終了後、3~5年で中小・中堅企業から中堅・大企業へ卒業した場合に、上限が2倍となる「卒業促進枠」も新たに用意するといった更なる支援強化措置が取られることとなります。

産業構造転換等の促進
市場規模が10%以上減少する業種・業態からの転換を支援する【産業構造転換枠】が新設されます。その際に廃業費がある場合、上限2,000万上乗せされ最大7,000万円の補助上限となります。また、海外から国内へ回帰を促進する【サプライチェーン強靭化枠】も新設となり、こちらは最大5億円の補助上限となります。

業況が激しい事業者への支援
新型コロナや物価高による厳しい事業者や、最低賃金引上げの影響を受ける事業者を支援していきます。高い補助率となる支援ですが、この要件として売上10%減少要件等が条件となります。

※各表・資料元:中小企業庁 令和4年度補正予算のポイント
中小企業生産性革命促進事業
ものづくり補助金、持続化補助金を代表に生産性促進にむけた事業への補助金が該当します。こちらでは2,000億円の予算が充てられています。
本事業のポイントとして、中小企業・小規模事業者の設備投資、販促支援や販路開拓の支援、IT導入、事業継承を支援していきますが、さらにグリーン分野への投資加速化、大胆な賃上げ、インボイスへの対応を支援すべく、補助率や上限を引き上げが計画されています。
加えて大きな特徴として、交付金事業(令和5年度まで)に加え、国庫債務負担行為※(令和6年度まで)により長期的な予算措置を担保します。この国庫債務負担を含めると予算案における本事業には総額4,000億円もの予算が充てられることとなり、中小企業・小規模事業者へ切れ目のない支援に取り組む姿勢です。
※国庫債務負担行為とは、財政法第15条に基づき、国会の議決を経て、次年度以降(原則5年以内)にも効力が継続する債務を負担する行為
ものづくり補助金
革新的製品・サービスの開発や、生産プロセス等の改善に必要な設備投資等を支援してきた『ものづくり補助金』については、【グリーン枠】を拡充し、温室効果ガス排出削減の取り組み度合いに応じて「エントリー」「スタンダード」「アドバンス」の3段階の補助上限を設定することで、幅広い省エネニーズに応える体制を整えていきます。
新設される枠として、【グローバル市場開拓枠】を新設。海外展開に係るブランディング・プロモーション等の経費を補助対象へ追加することで海外に向けた開発・生産支援を強化していきます。
賃上げ支援として、ほぼすべての申請枠で事業終了後3~5年後に事業場内最低賃金45円以上引上げ等を達成した場合、補助上限を最大1,000万円引上げされます。

※資料元:中小企業庁 令和4年度補正予算のポイント
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者による経営計画策定及び販路開拓等を支援してきた『小規模事業者補助金』については、インボイスに向けた支援が中心となります。
インボイス枠を拡充し、課税事業者に転換する事業者の補助上限50万の上乗せが行われます。

※上記図は現在(2022年11月9日)の類型、補助上限、補助率を表したものです。予算案成立後には変更がある場合ございますのでご注意ください。
IT導入補助金
中小企業の業務効率化やDXを推進するため、 IT ツール等の導入費用を支援する『IT導入補助金』についても、おなじくインボイスに対応した支援となります。
インボイス対応に必要なITツール導入促進のため、クラウド利用料やハード購入が補助の対象となり、補助率引上げ (1/2→2/3~3/4) を継続します。(デジタル化基盤導入枠が対象)
また、安価な支援ツール導入も支援するため、補助下限額(5万円)を撤廃し、事業者のDX促進を促します。

※上記図は現在(2022年11月9日)の類型、補助上限、補助率を表したものです。予算案成立後には変更がある場合ございますのでご注意ください。
事業承継・引継ぎ補助金
事業承継・引継ぎにかかる設備投資や販路開拓、専門家活用、廃業費等を支援するのが『事業承継・引継ぎ補助金』です。
【経営革新事業】では、事業終了時に事業場内最低賃金+30円以上等であれば補助上限600万円から800万円へと引上げされます。
現経営者のみならず後継者による取り組みも補助対象とし、事業承継の早期化、円滑化を促進していきます。
その他にも中小企業・小規模事業者への支援としては、新たな借換保証制度や信用保証制度が創設される『資金繰り支援』、輸出促進やインバウンドなどの『円安環境への対応』インボイスや事業承継に対応するための『相談体制の強化』、『価格転嫁対策の更なる強化』等、さまざまな支援が計画されています。
予算案の閣議決定により、その概要が公開された中小企業等事業再構築促進事業・中小企業生産性革命促進事業の各ポイントをご紹介しました。各事業とも類型の創設によって新分野への成長・展開を後押しする支援、賃金引上げ条件による支援強化を中心とし、中小企業・小規模事業者へ積極的な経営改革を促しています。
各要件をはじめとした詳細については、成立後の発表を待つこととなります。弊社でも引き続き本事業の続報に注視し、詳細がわかり次第お知らせいたします。
参考リンク