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プロジェクト

特別支援学校を支援したい!徹底したヒアリングが作り出した、ユーザーに寄り添うバス運行管理システム開発にかける想い。

株式会社タウンクリエーション

 

月間500万PVのアクセスを誇る、リアルタイムでバスの到着情報が取得できるバス運行案内WEBサービス「BUSit」を開発し、広島のバス利用の利便性を大きく向上させた実績を持つ株式会社タウンクリエーション。
新たに特別支援学校向けのバス運行案内システム「School BUSit」を開発し、多くの悩みを抱える保護者や学校に寄り添う形の新しいバス運行管理システムを作り上げた。学校側と綿密なヒアリングを介してシステム開発に取り組んだ前紅三子社長に、「School BUSit」の開発に至った経緯や取り組みにかける想い、そして展望についてお話を伺った。

画面左:株式会社タウンクリエーション 前 紅三子 社長
画面右:株式会社フィールドマネジメント 榎

営業に伺った特別支援学校の大変な苦労を知り、「School BUSit」の本格的な開発を決意

タウンクリエーション様は2012年に設立されてちょうど11年目ということで、今回特別支援学校向けの「School BUSit」というサービスをリリースされました。この特別支援学校向に目を向けられたというのは、どういった理由があるのでしょうか?

前社長(以下略):開発のきっかけは、特別支援学校のスクールバス運行が大変なご苦労をされて運営しているのを知ったことです。

弊社のサービス「BUSit」はバス会社が取引先ですがコロナの流行により人々の外出自粛、リモートワークによる移動の減少がみられ、人が動かなくなりました。バス会社も利用者の減少により減便やコロナ対策で三密を避ける傾向が強く、私達自身もバス会社に出向いて営業活動ができない状況でした。
そこで、スクールバスを利用されている特別支援学校へ、障碍者の生徒をバス停で長く待たせないために保護者がバスの到着時間を確認できる「BUSit」を応用した交通案内システムの導入を提案に伺いました。
しかし、特別支援学校では車椅子で登校される生徒や隣に人がいるとパニックを起こしやすい生徒など様々であること、さらに新入生や卒業生の存在があり、毎年それらすべてを考慮して一台のバスに乗れる人数把握と座席配置を調整し運行コース決定という、非常に大変な準備と課題を抱えながらスクールバス運営を行っていることにお話を聞いて気づかされました。

私達が知らなかった多くの準備や計画によって動いていることの驚きと共に数々の課題があることを知ることになり、手助けをしたいという想いが私の中で強く生まれ、弊社で特別支援学校向けバス運行システムを開発する決意をしました。

特別支援学校向けスクールバス運行システム「SchoolBUSit」について語る前社長

「学校関係者」から「保護者」まで、幅広いニーズに応える仕組みを実現。

「School BUSit」のシステムはどのような仕組みでしょうか?

「School BUSit」は生徒の住所データを登録するとシステム上の地図に住所が表示され、その住所に近い最寄りのバス停に沿ってバス運行コースを設定するというのが基本的な仕組みです。地図上のバス停を選択するとそのバス停に近い生徒をリストアップする機能があるため、バスの定員や座席を生徒の特性と照らし合わせて運行コースを決めることができるようになります。
決められたコースはスマートフォンアプリで保護者にも共有されます。スクールバスの位置はリアルタイムで情報が更新されますので、保護者や生徒がバス停に向かう時間を調整することができるようになります。

送迎について乗り忘れや下校時では降ろし忘れなどの事故が起きることが想定されますが、乗降チェックや連絡について対策はとられていますか?

「School BUSit」は乗降チェック機能があり、特別支援学校の管理システムや保護者のスマートフォンアプリに通知が届く仕様です。乗降チェックにはスクールバスの介助員に担当していただき、介助員は専用のタブレット内に表示された本日乗る生徒の乗車リストを確認しながら乗降チェックを行っていただきます。介助員が降車チェック後に運行終了を行うにはバス最後部のQRコードを読み取る作業があり、バスを隅々まで目視確認させる仕組みで、生徒の置き去り防止の強化として導入しています。
欠席や遅刻についても「School BUSit」の機能を使って連絡ができます。保護者が専用サイトを利用することで介助員及び学校へ情報の共有が行えるので、介助員はその場で状況を把握して乗降チェックを行うことができます。

このように乗降チェックの通知や欠席や遅刻の連絡の他、バスの遅れや変更などスクールバスの運行上重要な情報は学校、介助員、保護者と全員で情報が共有できるようになっていますので、万が一の不測の事態にも即時連絡・対応が行えます。

他に、学校側からリクエストはありましたか?

「一番初めに学校へ到着するスクールバスが知りたい」という要望がありました。バス運行コースは生徒の様々な条件を考慮して決定しています。生徒によって対応する先生も違いますので、到着する順番が分かるようにしてほしいとのことでした。ご要望をお聞きして、こちらも対応できるようにしています。

教育委員会もメリットがあるとのことですが、どういった内容ですか?

教育委員会に提出するスクールバスの運行路線図や運行実績等の報告書を、システムを使って作成することができます。ヒアリングで実際に問われた内容に、「ある生徒の家族からコロナウイルス患者が出ました。その生徒が乗ったバス履歴は分かりますか?」というものがありました。コロナウイルスの患者又は濃厚接触者が出た場合、教育委員会は詳細情報を収集する必要があります。このような不測の事態でも「School BUSit」では必要な情報を手早く揃え、教育委員会へ提出することが可能です。

説明資料よりアプリ画面(開発中の画面につき実際とは異なる場合あり)

安心して使えるシステムのために、緻密なヒアリングの実施と保守管理を強化に取り組む。

特別支援学校向けのスクールバス運行システム開発には大変なご苦労をされたと思います。どのような点が強く印象に残っていますか?

開発には特別支援学校のスクールバス運行について一連の仕組み・流れを弊社で正確に把握しシステムへ落とし込めるように設計しなければならないため、学校や介助員、バス会社、保護者と何度もヒアリングをする必要がありました。なぜかというと、データベースとアプリケーションの繋ぎ込みの関係上、追加や変更の対応が非常に困難だからです。そのためヒアリングはとても重要でした。
開発テスト走行では、特別支援学校の生徒の中には環境が変わるとパニックを起こされる生徒もいるため、バスの同乗の許可がおりませんでした。そのため、テスト走行を学校にお任せして、結果を伺いながらフィードバックするという難しい開発環境で挑みました。また、保守管理についても生徒の住所データやお名前など個人情報ということやクラウド上での取り扱いになるためISO27001(※1)とISO27017(※2)を取得し、データ保護を強化しています。

こうして、ヒアリングによる反映と保守管理の強化によって、学校や保護者が安心して使用できるシステムに仕上がりました。

(※1) ISO27001:情報セキュリティマネジメントシステムの要件を定義する国際規格。
(※2) ISO27017:クラウドサービスに対する情報セキュリティに関する国際規格。

営業面ではいかがでしょうか?

「School BUSit」は公営の特別支援学校を対象として県や市と契約を目指していますが、各自治体への入札資格がないと契約に取り付けられない問題がありました。そこで全国の自治体への入札資格を持っている代理店とタッグを組んで展開をしていくことで対応しています。学校や介助員、バス会社、保護者及び生徒と多くの方々が関わるシステムのためご紹介時に説明が複雑になる点については、紙の資料の他に「School BUSit」専用のサイトも作成、仕組みを理解していただくための紹介動画を用意しています。

お問い合わせの中には、学校単独で利用したいという要望もあります。嬉しいお言葉ですが、このシステムは教育委員会単位で構築しているため、学校単独での導入が難しいのです。一校での導入は価格としても厳しくなるため、教育委員会と協力して一緒に取り組んでいただくことをお奨めしています。

未来への展望を語る前社長

乗り物を乗り継いでいく時代の、総合交通案内を支える存在に。

今後はどのような会社を目指して進んでいこうと考えていらっしゃいますか?

今は乗り物を乗り継いでいくことが手軽で、当たり前に行われています。MaaS(※3)という言葉がありますが、この考え方の元、弊社のシステムで総合運行案内ができればと開発を進めています。弊社のシステムは運行データに高い互換性を備えるようデータベースを設計しているので、様々な交通機関に適用できます。いずれはバス以外のフェリーや鉄道など他の交通機関についてデータ作成できればと考えています。
また、交通機関の移動を調べるときにはグーグルマップを利用されている方が大半です。しかし、グーグルマップに対応できていない交通機関も多く各機関ではデータ作成に取り組んでいます。そこで、弊社ではグーグルマップに対応するデータフォーマット開発にも取り組んでいます。弊社のフォーマットを各交通機関に使っていただくことでグーグルマップに対応したデータ作成が容易に可能となり、メジャーな総合交通案内で弊社の技術が活用されるようになればと考えています。

(※3) MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス):マイ カー以外のすべての交通手段によるモビリティ(移動)を1つのサービスとしてとらえ、シームレスにつなぐ 新たな「移動」の概念

最後に、弊社はこの度の新規事業の構想を事業計画書という形に落とし込むお手伝いをさせていただきましたが、いかがでしたでしょうか?

私自身もコンペやあらゆる事業計画の策定、事業の説明をしたことがありますが、事業がビジネスとして成り立つのか?というところを、わかりやすく文章としてまとめるには色んな視点を知る必要があると感じていました。私達開発側の視点だけでなく、そこにどれだけのニーズがあるのか、情勢に適しているのか。利用者や外側の視点を深堀して理解しておかないとわかりやすく書けないと思います。フィールドマネジメントさんの事業計画書では的確に表現してくださって心強かったです。

ありがとうございます。弊社としましても「School BUSit」が多くの特別支援学校で使われることを願っています。

今、広島の市立支援学校さんにスクールバスのシステムを使っていただいていますが、何度もヒアリングをして教えていただいた関係者の皆様の声をベースに開発を進めていったのが弊社のスクールバス運行システムです。本当に「School BUSit」は、全国の特別支援学校に利用していただきたいという想いが私達にもあります。


前 紅三子 / 株式会社タウンクリエーション 代表取締役

【プロフィール】
1990年広島工業大学経営工学科卒業。丸紅株式会社を経て、1997年10月株式会社広交本社入社。その後、広交グループの運輸系会社の情報システム担当部長就任。2013年3月「バスロケーションシステム」で特許取得。2013年6月、株式会社タウンクリエ―ションを創業。2016年にDBJ女性起業事業奨励賞、2017年には中国地域ニュービジネス特別賞を受賞する他、数々の賞を受賞。2021年「運行管理システム」の特許取得。
【受賞歴】
2015年:ひろしまベンチャー奨励賞銀賞を受賞。
2016年:DBJ女性起業事業奨励賞を受賞。
2017年:中国地域ニュービジネス特別賞を受賞。
2018年:広島県創業表彰を受賞。

会社概要
名称株式会社タウンクリエーション
代表取締役前 紅三子
所在地広島市中区榎町10-16 太陽機工ビル7F
創業2013年6月
事業内容WEB開発
・BUSit
・BUSitバスロケ
・School BUSit
ホームページhttps://www.towncreation.com
お問い合わせ先お問い合わせフォーム有り